「特定親族特別控除」で変わる学生バイトの境界線――年収103万円から150万円へ

スマホdeほけん編集部監修者

ファイナンシャルプランナー

保有資格

AFP・2級FP技能士

専門分野・得意分野

生命保険・社会保障・金融全般

昨年末、世間の注目を集めた「年収103万円の壁」。学生やパート主婦などの働き方に大きな影響を及ぼしてきたこの制度に対し、政府が大きな見直しを行いました。令和7年度の税制改正では、所得控除の仕組みが刷新され、「働き控え」の解消に向けた新制度として「特定親族特別控除」が導入されました。

学生アルバイトの収入と、親の扶養控除の関係はどう変わるのでしょうか。本記事では、改正の背景や新制度の詳細、そして今後の課題について国際税務の視点から解説します。

令和7年度税制改正の目玉「103万円の壁」緩和

これまで学生や主婦が意識していた「年収103万円の壁」は、基礎控除(48万円)と給与所得控除(55万円)による非課税枠でした。今回の税制改正では、この基準が年収160万円まで引き上げられ、段階的に基礎控除額も調整されることとなりました。

この措置により、従来は103万円を超えた段階で発生していた所得税の負担が軽減され、「年収調整」の必要性が減少することが期待されています。

もう一つの壁「扶養控除の103万円」に着目

今回の改革でさらに注目されたのが、「扶養控除の壁」です。大学生の子を扶養する親は、子の年収が103万円を超えると63万円の扶養控除を失うため、結果的に親世帯の手取りが減るという“逆転現象”が起きていました。

この現実を受け、政府は「特定親族特別控除」を創設。学生が150万円まで収入を得ても、親は引き続き扶養控除を受けられるようになります。

段階制導入でより現実的な設計に

新たな控除制度では、年収150万円を超えても控除額が段階的に縮小され、最終的に188万円を超えると控除がゼロになります。これにより、103万円超で即控除ゼロというこれまでの仕組みから脱却し、柔軟な対応が可能になりました。

「働いたら損」から「働いても大丈夫」へ。制度の見直しは、学生と親世帯の双方にとって歓迎すべき変更といえます。

海外と比較して見える制度の独自性

アメリカでは、学生のアルバイト収入が扶養控除に直結する制度は存在しません。親が教育費の負担をした場合に適用される「American Opportunity Tax Credit」などはありますが、授業料や教材費に限定され、年収ベースの控除とは趣が異なります。

また、アメリカの大学は地方にあることが多く、学生はキャンパス内で生活するためアルバイト機会が限られ、学業への集中が優先される傾向にあります。

制度の限界と今後の課題

新制度は歓迎される一方、大学生が年収188万円に迫るほど働くことに対し、「本当に学業に集中できているのか?」という疑問も残ります。

国際競争力の強化が求められる今、単なる所得控除ではなく、教育支援や奨学金制度の拡充など、学生が安心して学びに専念できる環境整備が本質的な支援ではないかという声も上がっています。

まとめ:特定親族特別控除がもたらす意義

「特定親族特別控除」は、学生の就労と親の扶養控除の両立を可能にし、これまでの制度が抱えていた“年収の壁”問題に柔軟な解決策を提示しました。

ただし、制度の真の目的が「労働奨励」ではなく、「教育支援」に向かうよう、今後の政策設計にはさらなる工夫が求められます。

監修者からひとこと

スマホdeほけん編集部監修者

ファイナンシャルプランナー

今回導入された特定親族特別控除は、扶養控除制度の柔軟性を高め、実務面でも極めて実用的な制度設計と言えます。

しかし同時に、制度が学業と労働のどちらを優先すべきかという価値判断に強く影響を及ぼすことは否定できません。教育の本質を見据えた議論と制度運用が求められます。