

スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
AFP・2級FP技能士
「保険料がもったいない」「ある程度の貯蓄があれば大丈夫」──こうした理由から医療保険を解約したという声は決して少なくありません。確かに、無理のない範囲で自助努力を優先する判断は合理的な側面もあります。
しかし、実際に入院や手術といった医療費負担が発生した際に、「思った以上に出費がかさんだ」「公的保障だけではカバーできなかった」と後悔するケースは多く見られます。特に、差額ベッド代や長期化する通院治療、療養中の収入減少といった費用は、貯蓄だけで対応しきれないリスクとなります。
医療保険は、こうした予測不能な医療リスクを分散する手段のひとつです。公的医療保険や高額療養費制度では補いきれない部分をカバーし、万が一の際にも安心して治療に専念できる環境を整える役割を持っています。
本記事では、医療保険をやめた後に生じやすい経済的リスクと、備えるべき理由について、制度の仕組みや実例を交えながらわかりやすく解説します。「本当に今のままで大丈夫なのか?」を再確認するための参考にしてください。
医療保険をやめた後に直面する3つのリスク
医療保険をやめた後、以下のようなリスクに直面する可能性があります。
医療保険をやめた後の主なリスク
1. 高額医療費の自己負担リスク
日本の医療制度では、公的医療保険によって医療費の自己負担割合は原則3割に抑えられています。しかし、がん治療や手術を伴う入院では、たとえ3割でも数十万円規模の自己負担が生じることがあります。
生命保険文化センターの調査によると、入院1回あたりの自己負担費用は平均20.8万円とされており、短期間の入院であっても家計にとって無視できない負担となります。
2. 短期・日帰り入院でも想定外の出費が発生
医療技術の進歩により、近年は日帰りや短期入院で対応できる治療が増えています。その一方で、差額ベッド代(個室料金)や食事療養費といった公的医療保険の対象外となる費用は自己負担です。
たとえば個室を希望した場合、1日あたり5,000円〜20,000円程度が発生することもあり、短期入院でも5万〜10万円の支出が必要になるケースが少なくありません。こうした費用を貯蓄でまかなう場合、予想以上に資金を取り崩すリスクがあります。
3. 働けない期間の収入減と生活費への影響
入院や療養期間中は、医療費の支払いだけでなく、収入が減少するリスクにも備える必要があります。特に、自営業者やフリーランス、個人事業主は傷病手当金などの公的補助制度が利用できないケースも多く、働けない間の生活費をどう確保するかが大きな課題となります。
会社員であっても休職期間が長引けば給与減少や無給期間が発生することがあり、医療費と生活費が同時に家計に重くのしかかる状況に直面する可能性があります。
医療保険をやめてからの備えがないと、治療費だけでなく生活費まで困窮する恐れがあります
「保険料を節約したい」と思っても、万が一の出費は貯金を大きく減らすリスクに。安心を手放す前に、リスクを再確認しましょう。
やめた後に再加入できない?医療保険における加入制限のリスク
医療保険は原則として「健康状態が良好であること」を加入条件としています。過去の病歴や現在の健康状態によっては、新規加入や保障内容の制限、特別保険料の上乗せといった条件が課されることが一般的です。
特に40代以降は生活習慣病やがんなどの発症リスクが高まり、医療保険の加入審査が厳しくなる傾向があります。一度解約した場合、健康状態に変化があれば「再加入できない」「希望する保障が選べない」といった事態に陥る可能性があります。
保険料の節約を目的に安易に解約するのではなく、将来の健康リスクと再加入の難しさを十分に考慮したうえで判断することが重要です。
医療保険の必要性を再確認
医療保険は、単なるコストではなく、将来の医療リスクに備えるための重要な経済的セーフティネットです。「給付金を受け取らなければ損」という短期的な視点ではなく、突発的な医療費負担を軽減し、安心して治療に専念できる環境を整えることこそが、本来の目的です。
実際、生命保険文化センターの調査によれば、入院1回あたりの自己負担額は平均約20.8万円とされています。医療保険により、入院給付金が1回あたり約10万円程度受け取れる設計であれば、比較的少ない保険料負担でもリスクに備える効果的な手段<となります。/p>
経済的な備えがあることで、医療費の心配を減らし、精神的な安心につながる──これが医療保険が果たす大きな役割です。加入時には保障内容と保険料のバランスをよく検討し、自分のライフプランに適した保障設計を行いましょう。
よくある質問Q&A
Q1. 医療費は高額療養費制度で賄える?
A. 高額療養費制度により医療費の自己負担は一定額に抑えられますが、差額ベッド代や食事療養費、生活費、通院交通費などは公的保障の対象外です。長期療養や自由診療を含めた場合には、相応の自己負担が発生するため、別途備えが必要です。
Q2. 短期入院なら備えは不要?
A. 現代医療では、短期・日帰り入院や通院での手術が増加しています。医療保険の中には、入院初日から、または日帰り入院でも給付対象となる商品があり、短期入院でも数万円単位の給付が受けられる設計が主流です。
Q3. 保険料が無駄になるのが嫌…
A. 医療保険は「リスクへの備え」であり、「給付がなければ損」という性質のものではありません。月2,000円程度の保険料負担でも、1回の入院で10万円以上の給付を受けられる設計は多く、費用対効果は高いといえます。万が一のリスクに対する資金準備の一手段として合理的です。
Q4. 再加入は簡単にできる?
A. 医療保険は、告知内容や健康状態によって加入可否が判断されるため、病歴がある場合や通院歴がある場合には、加入が難しくなることがあります。とくに40代以降は加入制限や条件付き加入が増えるため、健康なうちの加入が重要です。
Q5. 貯金で対応できない?
A. 自己資金だけで医療費や収入減を補おうとすると、生活資金や老後資金を取り崩すリスクが生じます。医療保険によって医療費リスクをカバーし、貯蓄を生活資金として確保することで、資産形成や将来計画を安定させることができます。
まとめ
医療保険は単なる支出ではなく、将来の不確実な医療リスクを経済的に分散するための仕組みです。確かに保険料を節約することで一時的な支出は抑えられますが、入院や手術による突発的な高額医療費や、収入減少による生活資金不足が現実となった場合、その影響は大きくなります。
とくに公的医療保険だけではカバーできない費用(差額ベッド代、先進医療費、生活費補填など)は、十分な貯蓄がない場合、家計を大きく圧迫する要因になります。医療保険はこうした経済的リスクに備える有効な手段です。
「今の自分にとって本当に必要な保障なのか?」を冷静に見極め、保障内容・保険料のバランスを考慮したうえで判断することが、後悔しない選択につながります。短期的な節約だけでなく、長期的な安心も視野に入れた保険設計を心がけましょう。
監修者からひとこと
スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
医療保険の解約は、確かに保険料を削減する手段のひとつですが、短期的な節約効果だけに目を向けるのは危険です。医療費の多くは予測できないタイミングで発生し、公的医療保険だけでは賄いきれない出費(差額ベッド代・先進医療費・入院中の生活費補填など)が生じるケースも少なくありません。
とくに高額療養費制度の適用範囲は医療費の一部に限られ、生活費や収入減への対応は自己責任となります。健康状態によっては解約後に再加入が難しくなることもあり、必要な保障を失うリスクもあります。
医療保険は、単なるコストではなく、**「経済的リスクへの備え」**としての機能を持つ金融商品です。解約を検討する際は、ライフステージや家計状況、自身の貯蓄額とリスク許容度を冷静に分析し、「本当に備えは足りているのか」「貯蓄でどこまで対応できるのか」を再確認することが重要です。
そのうえで、必要な保障と過剰な保障を整理し、無駄を省きつつも万が一への備えを失わない、バランスの取れた判断を心がけましょう。