

スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
2025年度、働く世代が企業と折半で支払う年間の平均保険料は54万4143円。これは10年前と比べて6万円近く増加しています。医療費の増大が続く中、保険料負担が現役世代に重くのしかかっています。今回はその背景と今後の制度維持への道筋を探ります。
健康保険組合の役割と財政状況
日本の健康保険制度では、企業と従業員が保険料を拠出し、加入者とその家族の医療費を支える「健康保険組合」や「協会けんぽ」などが機能しています。しかし、現状ではこの制度が高齢者医療を支える重要な財源にもなっており、保険料率は上昇の一途をたどっています。
年度 | 年間保険料平均額 | 保険料率(速報値) |
---|---|---|
2015年度 | 48万4336円 | 9.04% |
2025年度(予測) | 54万4143円 | 9.34% |
この保険料率の上昇は、高齢化の進行によって、75歳以上を対象とする「後期高齢者医療制度」への拠出金が増大していることが背景にあります。
医療費の増加がもたらす構造的課題
2023年度の医療費総額は約48兆円に達し、2010年度と比べて28.3%増加しています。特に75歳以上の後期高齢者の医療費は約18兆6000億円、全体の38.8%を占めるまでに拡大しています。
企業の対応と従業員への影響
例えば「ダスキン健康保険組合」では保険料率が11.03%に達し、従業員給与の約5.5%が毎月天引きされています。同組合の担当者は「保険料負担の増加は心苦しいが、重篤な病気を抱える従業員の医療費を支えるには制度の維持が必要」と語ります。
取り組み事例:地域で医療費を見直す「フォーミュラリ」
山形県酒田市では「地域フォーミュラリ」という制度を導入し、効能が同じでより安価な薬剤を選定し医療費を抑える工夫がされています。この仕組みにより、地域全体で年間2億円以上の薬剤費が削減されました。
薬剤 | 従来の価格 | フォーミュラリ採用後 |
---|---|---|
コレステロール降下薬(月額) | 555円 | 312円 |
Q&A:医療費負担と保険制度の今後
Q1. 健保組合はなぜ赤字になる?
A. 医療費増大に加え、高齢者医療への拠出金が収入の約4割を占め、現役世代の医療に使える予算が圧迫されるためです。
Q2. 自己負担割合の見直しは必要?
A. 所得に応じた段階的な負担増などを導入すれば、年間約8500億円の削減が期待されます。
Q3. OTC類似薬の保険給付見直しとは?
A. 市販薬と同じ成分の薬に保険適用を続ける必要があるかを議論することで、最大3300億円のコスト削減が可能とされています。
Q4. 健康経営の効果は?
A. 病気予防による医療費削減に加え、従業員の生産性向上にも寄与するため、企業と従業員双方にとってメリットがあります。
Q5. 医療保険はどこまでカバーできる?
A. 公的保険のカバーが限界に達する中で、民間医療保険による補完は今後ますます重要になります。
まとめ:今後の保険制度を考える
高齢化と医療の高度化が進む中で、現役世代の保険料負担は増大し続けています。医療制度の持続性を確保するには、医療の質とコストのバランスを見直す改革が不可欠です。同時に、一人ひとりが保険の在り方に関心を持ち、議論に参加することも求められます。
監修者からひとこと
スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
医療費の増加は避けられない現実ですが、その中で公的医療保険の限界もまた明確になりつつあります。FPとしては、現役世代こそ医療保険の選び方と保障内容を精査し、リスクに備えることが必要だと考えます。
また、企業と自治体が連携した予防医療の推進も重要で、家計の医療支出を抑える仕組みづくりに今後の制度改革が問われています。