難病診断まで平均3.4年──「診断ラグ」が家計と生活に与える深刻な影響とは

潰瘍性大腸炎やパーキンソン病など、治療法が確立されていない難病では、症状が現れてから確定診断に至るまでに平均3.4年かかっているというデータが明らかになりました。

この「診断ラグ」は、患者の身体的負担だけでなく、経済的にも深刻な影響を及ぼしています。医療費、通院日数、誤診リスクなど、多方面の課題が浮き彫りになっています。

診断までの長い旅──平均3.4年の現実

アレクシオンファーマの調査によると、診断までの期間は平均41.3カ月（約3.4年）に達し、5年以上かかった患者は全体の35％、9年以上も要した人が13％存在します。

年度別ではこの診断ラグが年々長期化しており、2014年度の32カ月から2023年度は45.4カ月へと増加しています。

通院日数と医療費──一般患者の数倍に

難病患者は診断確定までに平均69日通院し、176万円もの医療費を要していました。これは一般患者の通院日数の2.2倍、医療費の3.4倍にあたります。

原因のはっきりしない体調不良を繰り返し、様々な検査や治療を受ける過程で誤診も多く、精神的な負担も計り知れません。

家計とライフプランに潜むリスク

診断ラグにより無保険状態や適切な医療を受けられない時期が長引くことで、家計は急激に圧迫されます。加えて、通院や療養による就業困難が続けば、収入面への影響も避けられません。

このような状況を想定したリスクマネジメントとして、医療保険の見直しが有効です。特に、通院・入院・手術などに幅広く対応できる保険は、長期間にわたる診断・治療における家計負担の軽減に繋がります。

診断精度向上への期待と対策

聖マリアンナ医科大の山野教授は「診断スピードを上げることは患者の利益に直結する」と述べ、AIを活用した画像診断の導入や専門医ネットワークの拡充、新生児スクリーニングの対象拡大などを提言しています。

特に、稀少疾患では医師の経験や情報の偏りが診断遅延の要因となるため、地域格差の解消と専門機関との連携強化が急務です。

まとめ：不確実な時代に必要な家計防衛策

難病の診断ラグは、単なる医療の遅延に留まらず、生活設計の再構築を迫る問題です。早期診断と正確な医療アクセスはもちろん、予期せぬ長期療養にも備える医療保険の加入や見直しが欠かせません。

FPとしては、こうした不確実性を前提にした家計戦略こそが、真に“守れる暮らし”の基盤になると考えます。