

スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
保有資格
AFP・2級FP技能士
専門分野・得意分野
生命保険・社会保障・金融全般に精通。保険業界での実務経験をもとに、ユーザー目線で正確かつ中立的な情報発信を行っています。
認知症高齢者の介護施設での施錠を巡って、日本とスウェーデンで対応が大きく異なっています。日本では多くの施設が事故防止を目的に施錠管理を行う一方、スウェーデンでは本人の尊厳を重視し、基本的に出入りは自由です。
この記事では、スウェーデンの認知症介護における実践例をもとに、自由な外出と安全確保の両立について考察します。
日本の現状──施錠は原則禁止も、実態は容認
厚生労働省は施錠による外出禁止を「身体拘束」に該当するとし、原則禁止しています。しかし現実には、多くの施設で安全確保と責任回避のために施錠が行われています。
入所者が外に出て事故に遭えば施設が責任を問われるため、施錠は“やむを得ない措置”として定着しています。
スウェーデンの実例──エリックのケース
スウェーデンでは、法律上、高齢者施設の施錠は禁止されています。認知症患者のエリックさんは施設に入所後も出入り自由で、自宅を目指して何度も外出しました。
施設はエリックさんの「働いて暮らす」意識を尊重し、ゴミ出しや荷物運搬といった日中活動を提供。本人が役割を持ち、安心感を得た結果、徘徊も減少しました。
尊厳重視の文化──施錠は人権侵害
スウェーデンでは施錠は「移動の自由の侵害」とされ、施設スタッフや家族もその認識を共有しています。たとえ入所者が外出しても、チームケアのルールを守っていれば、施設は責任を問われません。
家族や職員の理解により、入所者の自由意志が尊重され、施設は“見守る”ケアに徹する姿勢が徹底されています。
施錠なしでも安心を得る工夫
スウェーデンの施設では、施錠の代わりに出口のキーパッドや隠されたボタンなどを用い、認知機能が保たれている人のみが出入りできるよう配慮しています。
また、GPS装着の提案なども行いますが、強制はせず、本人の選択を尊重します。エリックさんのように、パートナーが同じ施設に移ってからは外出せず、穏やかな生活を取り戻した事例もあります。
日本への示唆──尊厳と安全の両立を目指して
日本にも、施錠を行わず、信頼関係や役割づくりで安心感を提供する介護施設が存在します。「良いケアを行えば、施錠しなくても出ていかなくなる」──こうした理念に共感し、実践する施設が増えることが期待されます。
安全を確保しつつ、本人の尊厳を守るケアの在り方が、これからの認知症介護の標準になるべきです。
FP視点:介護費と認知症リスクへの備え
認知症は誰もが将来直面し得るリスクであり、介護施設での生活や在宅支援には多額の費用が発生します。施錠やケアの質に限らず、経済的な備えも重要な要素となります。
FPとしては、早期の介護資金計画の立案に加えて、認知症に特化した保障を提供する保険──認知症保険の活用が推奨されます。認知症保険は診断一時金や介護費補填などを通じて、本人と家族の生活の質を守るための心強い備えとなります。
監修者からひとこと
スマホdeほけん編集部監修者
ファイナンシャルプランナー
認知症ケアにおいて、施錠の有無は単なる管理手法ではなく、人権尊重の姿勢を問う重要なテーマです。安全性を理由に過剰な制限を加えるのではなく、本人の意志と尊厳に配慮した柔軟な対応が求められます。
制度だけでなく、介護者一人ひとりの意識と創意工夫が、入所者にとっての「安心できる暮らし」につながるのです。